モンゴルでの生活スタイルとして遊牧民というイメージがあると思います。モンゴルでは都市部で生活する人を除き、現在でも遊牧民としての生活スタイルをもつ人が多くいます。そんな彼らが、どのような生活をしているのか紹介します。


遊牧民の生活


      季節に合わせて住む場所を移動させる家畜の飼育方法を遊牧といいます。モンゴルの遊牧民は主に、牛、馬、羊、山羊、ラクダの5家畜を扱い、特にポピュラーなのが肉料理の中心となる羊です。家庭の中では、男性が家畜の遊牧を担当し、女性が搾乳や家事に専念するのが一般的です。遊牧民の子供達は都市周辺に住んでいれば、都市の学校に通い、都市部から離れている場合は、宿舎に寄宿して勉強をします。

また太陽光発電を利用して電化製品を置くなど、遊牧民のスタイルを残しつつ近代的な要素を取り入れる家庭が増えています。


移動式住居ゲル


      遊牧民はゲル(内モンゴルではパオ)と呼ばれる移動式の住居に住んでいます。ゲルは数軒がまとまって草原の一箇所に建っていて、そこに親族たちが住み、拡大家族集団となっています。

ゲルは移動のために、分解・組立が容易にできます。また、外観は強い風に耐えられるように円形で、屋根に向かって流線型になっています。ゲルは遊牧生活のための家ですが、ウランバートル市内でも、敢えてゲルに住む人々もいます。


モンゴルの宗教的伝統オボーについて


      草原や小高い丘のような場所に、石や木、馬の骨などで作られている標柱をオボーといいます。ハダクという青い布で飾られている場合もあります。遊牧民は昔から自然崇拝の考えを持っていました。自然の現象の中にはそれぞれ神様が住んでいて、中でも天の神様が一番偉いと考えていました。その天の神様に貢ぎ物を献上する際に見つけやすいようにオボーを作りました。オボーにはこのような宗教的な役割と同時に、境界標識や道標としての役割もあります。


モンゴル相撲について


       遊牧民の子供達は45歳の頃からモンゴル相撲で遊びながら育っているので、モンゴル相撲をしたことのない男性はほぼいません。モンゴルでは、相撲ができない男性、馬に乗れない男性は、男ではないという諺もあります。日本人がモンゴルに対して一番馴染みがあるのは、モンゴル相撲ではないかと思います。モンゴル相撲とは、モンゴル語で「ブフ」という伝統的格闘技で、年に一度の民族の祭典であるナーダム祭でも競技の一つとして行われています。モンゴルでは1997年にブフ・リーグが発足し、プロスポーツ化されました。しかし、宗教的な儀式としての意味合いも残されており、この点は日本の大相撲にも似ています。


モンゴルの酒文化について


      遊牧民は家庭で、牛や山羊の乳から蒸留酒を作ります。乳からヨーグルトを作り、さらに発酵をすすめ、蒸留すると出来上がりです。アルコール度数は15-20度くらいです。草原の冬は厳しく、雪が積もっていて、家畜の元気がないので搾乳ができません。そのために、冬の間は酒作りはしないので、夏しか飲むことができない酒です。モンゴルには馬乳酒と呼ばれるモンゴル独自の酒があります。馬乳を原料とした醸造酒です。アルコール度数は1-1.5度で、子供も飲みます。モンゴル人はみんな馬乳酒が大好きで、栄養分のたくさんある健康食品だといわれています。もちろん遊牧民は家庭で馬乳酒を作ります。

      本当に美味しい馬乳酒は、遊牧民のゲルで飲むことしかできません。町でも売っていますが、新鮮ではないので、そこまで美味しくないかもしれません。対照的にとても強いウオッカも好まれていて、約40度の度数があります。モンゴルではこのウオッカをストレートで飲むことが多く、非常にお酒好きな国民性だと言えます。冬はマイナス20度を超える極寒の中で、身体が温まる強いお酒が必要なのかもしれません。街では若い人は、ウオッカよりビールやウイスキー、ワインを飲む人がふえています。ただウイスキー、ワインは国内では作れないため輸入品しかなく、ウオッカ、ビールなどよりは高価になります。


モンゴルの伝統楽器、馬頭琴について


      馬頭琴はモンゴルの伝統楽器ですが、匈奴時代の紀元前のお墓からも出土しています。馬頭琴はチェロのような弓奏の弦楽器で、棹の先に馬の頭が彫刻され、胴体には馬の皮を張ります。また弦、弓毛ともに馬の尻毛を束ねて作ります。モンゴルで最もポピュラーな楽器で、遊牧民にも広く所有されていて、草原に美しい音色を響かせています。


独特な唱法ホーミー


      ホーミーとは、1人で2つの声を出すモンゴルの独特な唱法です。鼻のホーミー、鼻と口のホーミー、声門のホーミー、胸のホーミー、喉のホーミーと5種類の歌い方があります。昔の遊牧民達が、自然の音、風の音などの真似をしていて生まれたといわれています。モンゴル人でもホーミーができる人は限られていて、現在でも歌い手はホーミー発祥の地であるモンゴル西部に多いです。最近ではホーミーとメタルロックやヒップホップをミックスしたバンドが増えています。