モンゴル乗馬の楽しみ方とは?オススメの乗馬スポットも紹介!
手付かずの自然と、遊牧民文化が残るモンゴルで楽しめるアクティビティーと言えば、何が挙げられるでしょうか。やはり、大草原を駆け抜けながら、大自然を堪能できる乗馬が、モンゴル観光で娯楽度が最も高いアクティビティーと言えるでしょう。
とはいえ、多くの日本人にとって、乗馬はなじみがなく、イメージが湧きにくいかもしれません。そこで、今回は、モンゴルでの乗馬の楽しみ方のほか、他地域での乗馬との違い、モンゴルの乗馬のオススメスポットを紹介します。
モンゴル文化と乗馬
モンゴルでの乗馬の楽しみ方を解説する前に、豆知識としてモンゴルの文化と乗馬がどう関わっているかを説明します。モンゴル人は古来から、馬を重要な移動用家畜のみならず、対農耕民族との戦闘における戦力とみなし、馬と深い関係を築いてきました。モンゴル人のように、馬と生活をともにし、騎馬技術に優れた民族のことを騎馬遊牧民と言われています。
馬を率いて、騎馬遊牧民が、モンゴル草原に定住し始めたのは、1〜2世紀ごろ。騎馬遊牧民は、周辺地域に住む他民族を制圧しながら勢力を拡大し、13世紀のモンゴル帝国建国の時代にモンゴル草原を含むユーラシア大陸における地位を確立しました。
それから、騎馬遊牧民が、現在、モンゴル草原で目にする遊牧民族と称される形態に変えたのは、清朝が王侯領や寺領の境界を画定し、越境を禁じた17世紀以降とされます。移動を制限された騎馬遊牧民は、限られた土地空間の中で生活を営むため、牧畜に特化した生活スタイルを形成していきました。
市場経済が浸透した20世紀以降、遊牧民が首都ウランバートルに移住するようになり、遊牧民文化も、馬の飼育頭数も衰退、減少の一途をたどっていますが、騎馬遊牧民の文化は、伝統的な祭りという形で残りました。
遊牧民の誇りと名誉を競うナーダム祭
祭りとして残った騎馬遊牧民の文化は、毎年7月10、11日に開かれるナーダム祭があります。男の祭りと称されるナーダム祭では、競馬と相撲、弓の三大競技大会が開かれ、国中から集まった有志が、磨いた技で競い合います。モンゴルの乗馬文化を表す競馬は、種馬や6歳以上馬など、7種目でレースが行われます。大草原で開かれ、騎手を担う子供たちが馬に乗って緑地を疾走する競馬レースは、爽快。見る者に感動を与えます。ナーダム祭は、多くの観光客や競技参加者の仲間が集うのですが、騎乗で観戦する人が多く、在りし日の騎馬遊牧民を彷彿とさせます。
乗馬が人気の観光アクティビティとして定着
騎馬遊牧民の文化を代表する乗馬は、国が遊牧民文化を切り口に観光立国としての経済成長を目指す政策展開していることもあり、人気の観光アクティビティとして定着しました。そうした流れを受け、日本の旅行会社は、乗馬のサービスを展開する現地のモンゴル人の協力を仰ぎ、さまざまな旅行商品を造成。乗馬と、旅行者向けの移動式テント「ゲル」での宿泊、現地の遊牧民の生活を組み合わせた体験型の旅行商品をつくり、多くの旅行客の獲得に努めています。
モンゴルでの乗馬は他の地域と何が違うのか
乗馬がモンゴルの人気の観光アクティビティとして定着していることはわかりましたが、乗馬を組み込んだ旅行商品そのものは、国内外にあります。他の地域の乗馬と何が違うのでしょうか。
モンゴルの大自然を味わいながら、乗馬ができる
モンゴルは、亜寒帯もしくはステップ気候に属し、寒暖差が激しい特徴があります。最低気温が低く、冬季はマイナス30度になる一方、雨や雪などの降水量が少ないです。そのため、草木が生えても成長しづらいことから、見渡しの良い広大な大地が形成されました。そうした壮大な大地では、大草原が広がっており、大草原で乗馬することで、他の地域では味わえない爽快感が、体感できます。日本でも乗馬を楽しむことはできますが、日本は島国のため、モンゴルのような大陸独特の開放感を感じられません。
春から夏にかけては地面が緑に変わり、空の青さと草木の色のコントラストが織りなす自然の美しさが最高潮に達します。そして、周囲には草原を横切る羊・ヤギ・馬といった牧畜用の動物の群れなど、日本では見られない光景を楽しめます。
大草原に生きる遊牧民の生活に触れられる
モンゴルでの乗馬体験には大抵、家畜とともに草原を移動して生活する遊牧民の生活を体験できるコースになっていることが少なくありません。遊牧民の生活を体験できるツアーでは、遊牧民が育てる羊の乳搾りを体験するほか、遊牧民の家族が住むゲルを訪問。仏画や仏像が祀られている祭壇を拝んだり、遊牧民の家族と夕食をともにしたりします。
夕食では、通訳を交えて遊牧民の家族と談笑。家族が用意した羊の肉のスープや、モンゴルのチーズ「アーロール」を食べながら、身も心も温めます。ユーラシア大陸において遊牧民の分布は、モンゴルなどの北アジア、シベリア地方、アラビア地方などに限られますが、モンゴルでの旅行は乗馬体験に付随して希少な遊牧民の生活も体験できるのです。
モンゴルでの乗馬の楽しみ方(基本編)
モンゴルでの乗馬を楽しむためには、さまざまなコツがあります。まず、本格的な乗馬の方法を解説する前に基本編を紹介します。
海外旅行保険に加入しておく
乗馬は落馬などに伴うけがのリスクが常に付きまといます。けがのレベルはかすり傷などの軽傷から、骨折や入院までの大けがまでが想定されるため、渡航前に海外旅行保険に加入しておくことをオススメします。
海外旅行保険は、旅行先で入院、手術した時に治療費を一定額補償してくれる治療用補償や、ケガを原因として後遺障害が残った時に保険金を受け取れる傷害後後遺障害補償があります。
落馬や乗馬によるけがは最悪、後遺症や死亡が引き起こす事故に巻き込まれる恐れが十分にあるため、上記の補償がある海外旅行保険の加入は必須になるでしょう。保険会社が販売している単体の保険商品を選ぶ方法がありますが、海外旅行保険が付帯されているクレジットカードを保有しておくことでも、保険の加入が可能です。
動きやすい服装を用意
乗馬は当然、かなり強度が高い運動に当てはまるため、動きやすい服装を用意しましょう。ただ、素材は軽く、動きやすくても、動くと音が鳴るような素材のスポーツウエアや、ひもが垂れ下がるようなパーカーを着装するのは避けましょう。色合いが明るく、馬が興奮してしまうような蛍光色があるような服も厳禁です。馬が蛍光色に反応し、落馬の原因になりかねません。
さらに、動きやすさと安全性の両方を担保するため、スカートや半ズボンの着装、スリッパやサンダルの着用を避けたほうが無難です。「夏はどうすれば良いのか」という疑問があるかもしれませんが、モンゴルは標高が高い反面、湿度が低いため、夏に長袖、長ズボンで過ごしても問題ありません。
持ち物は何も持たない
馬に騎乗中は上下動が激しく、もしポケットにスマートフォンや財布を入れていると、落下する可能性があります。草原での乗馬は、距離が長い上に、草原のエリアは広いため、落とした物を見つけるのは簡単ではありません。したがって、乗馬する時は、何も持たないようにしましょう。
ポケットや携帯用のリュックに入れる荷物は、栄養補給用のお菓子やトイレペッパーなど必要最低限に留めるのが無難です。「観光の記念として乗馬している様子を写真に納めたい」という場合は、日本語ガイドに荷物を託すことをお勧めします。
上記の準備を事前に済ませておくことで、乗馬を気兼ねなく楽しむことができます。
モンゴルでの乗馬の楽しみ方(応用編)
ここからは、実際に乗馬する時の注意点など、モンゴルでの乗馬の楽しみ方の応用編に迫ります。
重心を中心に置いた意識で騎乗する
騎乗時は、落馬を避けるために、重心を中心に置いてバランスを取ってください。体の重心が前すぎたり、逆に後ろ過ぎてもいけません。特に、モンゴルの草原のような広大な場所では、馬が急スピードを出す場合があるため、バランスに気を配り、乗馬する必要があります。
また、騎乗時は上下動が激しく、腰を中心とした体幹にかなりの負荷がかかります。そのため、上下動に逆らうことなく、馬の動きに自分の体を動かすことで、馬と体が一体化する意識で馬を操縦しましょう。
自分がリーダーという意識を持つ
馬は上下関係、主従関係に敏感な生き物です。自信なく馬に合図を送るなど、騎乗者よりも、馬の方が偉いという意識を馬に与えてしまうと、馬の態度が傲慢になり、主導権を渡してしまいます。馬に主導権を捧げないよう、必ず力強くかつ優しく馬をリードしましょう。
逆に騎乗者より馬が上という関係性になると、どうなるのでしょうか。馬が草を食べ始めても黙認するなどして、馬の思い通りにしていると、馬は次第に騎乗者の言うことを聞かなくなります。結果、うまく操縦ができなくなるため、落馬のリスクが増大してしまうのです。
馬の後ろは絶対に近づかない
リスク管理の分野にはなりますが、馬に乗っていない時は、馬の後部に近づかないようにしましょう。馬は警戒心が強く、後方にいると、外敵だという認識を与え、後ろ足で蹴られる危険性があります。
実際に蹴るかどうかは、馬の性格や不快に感じているかどうかによりますが、万が一、足が直撃すれば、大けがは免れません。背後に回らないという意識を常に持つようにしましょう。
勝手に乗り降りしない
馬の背中は想像以上に高い位置にあり、乗り降りは容易ではありません。慣れれば1人で乗り降りは可能になりますが、乗馬経験が浅かったり、初めて乗馬に挑戦したりする場合は、ガイドの補助をしてもらうようにしましょう。
手綱は手に巻き付けない
片手で手綱をしっかり持ち、手に巻きつけないでください。手綱を手に巻きつけていると、落馬した際に高確率で引きずられます。地面に引きずられると、最悪命を落とす危険性が生じるため、こうした事態は避けなければなりません。
左右どちらでも良いため、片手で手綱を持ち、もう片方は鞍(くら)を掴むと騎乗姿勢が安定します。
足を鐙に深く入れない
鎧(あぶみ)とは、鞍の両側に吊るされた騎乗時に足をかける馬具のことです。この鐙に足を入れていると、足が外れにくくなり、落馬した時に、手綱を手に巻きつけていた時と同様に引きずられやすくなります。
騎乗時に足がブラブラしないように、余裕を持って、軽く置く程度にとどめましょう。
サングラスを着けて乗馬する
乗馬の最中は、厳しい日差しや虫など、視覚的な脅威が降りかかってきます。サングラスをつけて、それらの脅威から目を守りましょう。虫は痛いだけでなく、目の中で産卵する種類の虫もいるため、しっかりとしたサングラスを付けることが大切です。
モンゴルでオススメの乗馬スポット
最後にモンゴルでの乗馬でオススメできる場所をピックアップして見ました。
テレルジ国立公園
モンゴルで乗馬するなら、テレルジ国立公園は外せないでしょう。テレルジ国立公園は、首都ウランバートルから北東に70キロ進んだところにあり、モンゴル有数の保養地として多くの観光客が訪れています。国立公園と言われるだけあって、水平線まで広がる緑の大草原や岩山は、見る者の心を揺るがします。そうした景色の中でする乗馬は、心と体を癒やしてくれます。公園内にツーリストキャンプのゲルが点在しており、乗馬体験に加え、遊牧民の生活が疑似体験できるのも魅力でしょう。
また、乗馬体験に付随したアクティビティが、テレルジ国立公園では充実しています。中でも、有名なのが、亀岩と呼ばれる岩山で、素登りで岩山の頂上に登って写真撮影や景色を楽しめます。
亀岩の近くでは、小さな牧場のようなスペースがあり、ラクダに乗ったり、鷹を手に乗せたりできます。動物園では味わえない、動物との触れ合い体験が楽しめるでしょう。
ホスタイ国立公園
ホスタイ国立公園はウランバートルから南西に100キロ進んだところにある国立公園です。モンゴル原種とされる野生馬「タヒ(モウコノウマ)」の生息地で、日本では見られない野生馬の生態をまじまじと観察できます。
ホスタイ国立公園は、手つかずの草原や岩山、湿地、砂漠などが残り、タヒ以外に多種多様な動植物が生息しています。シベリアマーモットや鹿、狼、タルバガン、ガゼルなどの哺乳類のほかに、ヒゲワシやハヤブサ、イヌワシといった猛禽類など、世界的に数が減少している種の姿を簡単に見られます。
ホスタイ国立公園での乗馬は、生息する野生動物を眺めながらできる点が大きな魅力でしょう。タヒは、広大な敷地を持つ公園をドライブする際に見られるケースが多いですが、運が良ければ、観光用のゲル付近で見ることができるかもしれません。
モンゴル国中央県アルタンボラク村郊外
アルタンボラク村郊外は、モンゴル国の中心部である中央県に位置します。大草原が四方八方に広がるほか、小川がゆったりと流れ、他の地域と同じように心身を心から癒やしながら、乗馬ができます。アルタンボラク村郊外は他の地域と比べ、乗馬スポットに特化されているため、初心者ではなく、乗馬の経験が豊富な中級者から上級者が訪れます。乗馬する距離も、30〜40キロと長いケースが多くなっています。
長距離の乗馬で行き着く先は、ホスターノロ自然保護区をはじめ、白樺林や高原植物の咲く森など。アルタンボラク村郊外では、大草原からモンゴルでは比較的珍しい森林地帯までさまざまな自然を楽しめるでしょう。
ゴビ砂漠
ゴビ砂漠は、ウランバートルから約600キロ離れた場所にあり、中国北部の内モンゴル自治区からモンゴル南部にかけて広がっています。サハラ砂漠など世界有数の砂漠地帯の1つに数えられ、モンゴルの国土に占める面積は約3分の1に達します。砂漠と聞くと、全く草木が生えていない様子を連想しそうですが、ゴビ砂漠は草原があり、放牧されるラクダの群れも見られます。そして、意外にも草木がある場所では、乗馬を楽しむことも可能なのです。
ゴビ砂漠での乗馬は、砂漠の北側ででき、典型的な砂漠の景色の中で散策するコースです。バヤン・ゴビ砂漠と呼ばれる北側の地域は、巨大な砂丘と複数の河川が混在している「砂と破砕」という壮大な景観が残り、一部の旅行会社が企画するツアーでは、そうした雄大な自然を眺めながら、ホーストレッキングが可能だとされています。もちろん、ゴビ砂漠では、ラクダライドも可能です。
モンゴルでの乗馬は世界一!
本記事では、モンゴルでの乗馬の特徴のほか、モンゴルでの乗馬の楽しみ方、モンゴルでの乗馬でオススメのスポットを紹介してきました。広大な草原や、無数の羊やヤギの群れ、剥き出しの岩山…。日本では見られない壮大な景色の中での乗馬は、野外アクティビティにおいて世界トップクラスの爽快感を味わえるでしょう。
馬上から景色は、格別です。徒歩やドライブ中に感じる大自然の魅力を感じられるのは間違いありません。現在は、新型コロナウイルスで海外渡航自体が難しいですが、渡航禁止が解けたタイミングで「海外旅行に行きたい」と思った時に、旅行の選択肢として、モンゴルでの乗馬を選んでみてはいかがでしょうか。